子育てコラム

【チェック表つき】とにかく疲れる、子育てがつらい…親のバーンアウト症候群の予防と対処法

以前より疲れやすいしやる気が出ない…

家族のために頑張ってきた、子どもの事も大好きなはずなのに…

●なんだか最近子育てが苦しい…
●とにかく疲れる
●子どもに興味がなくなってきた
●どうでもよく感じる
●無性にイライラする…
●親であることが耐えられない感覚がある
●人に優しくできない
●焦り、怒り、罪悪感を感じやすい

こんな風に感じることはありませんか?

それは、親のバーンアウト症候群への入り口かもしれません。

 

親のバーンアウト症候群とは

バーンアウトは、日本語で「燃え尽き症候群」とも呼ばれ、スポーツや仕事など、それまで熱心にやっていた人が、突然やる気を失ってしまう状態のこと。

そして、親のバーンアウト症候群とは、親が子どもに尽くした結果、「自分の子供の世話をするエネルギーが全くない」などの状態に陥ることです

バーンアウトの代表的な尺度であるMBI(Maslach Burnout Inventory)を開発したアメリカの社会心理学者クリスティーナ・マスラックは、バーンアウトについてこう定義しています。

「長時間にわたり人を援助する過程で心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果、極度の身体疲労と感情の枯渇状態示す状態であり、卑下、仕事嫌悪、思いやりの喪失を伴うもの」

バーンアウトの兆候として、「朝起きられない」「子どもの世話をしたくない」「イライラが募る」といったことから始まり、「無関心」「突然の家事育児放棄」「アルコールが増える」「過度の消費」といった行動に発展していきます。

バーンアウトになりやすい職業

また、バーンアウトになりやすい職業として、看護師、介護福祉士、教師などの人的支援で感情労働をともなう職業があげられています。

 

では、子育てはどうでしょうか。

子育ては、自分自身より子どもを優先し尽くす場面が多いものです。
しかし、尽くしたからといってすぐに目に見える成果がでないのも子育てです。

そんな中、親は日々達成感や自己有用感を感じられないまま慢性的なストレスにさらされています。

もちろん、親にとって子どもは喜びと充足感をもたらしてくれる存在です。
でもそれと同時に、子どもや家族が疲労の原因となり、親としての役割に疲れ果ててしまうこともあります。

一見矛盾しているようですが、そうではありません。
自分の子どもを愛していることと、親としての役割に疲れ果ててしまうことは別の問題なのです。

そう考えると、自分を後回しにして子どもに尽くす子育ては感情労働の代表格といえるでしょう!

 

バーンアウトになりやすい人の特徴は?

一般的に、バーンアウトになりやすい人はこんな特徴があると言われています。

完璧主義の人
『子育てにおいて少しでもミスがあったら、完全に失敗したのも同然』と考えがちなのが完璧主義。だからこそ、頑張っても埋まらない理想と現実のギャップに疲弊してしまうことがあります。

真面目な人
真面目な性格の人は信頼できる人でもあります。しかし、熱心になるがあまり手を抜くことができず、結果、バーンアウトしてしまうことも多いようです。

責任感が強い人
責任感の強い人は、他の人を頼ったり任せたりすることに申し訳なさや不安を感じる人が多いです。そのため、自分自身でなんとかしようと背負いこんでしまいます。


もちろん、理想を持ち責任感をもって真面目に子どもに相対するのは必要な要素です。

でも、それが度を越して自分自身を追い込んでしまうようなら、一旦理想を手放し、出来ない自分にOKを出してバーンアウトを防ぐことが大切です。

 

あなたのバーンアウト危険度は?

「わたし…バーンアウト症候群かも…」

と思ったら、先ずは自分の今の状態を知り、自分で自分のことを大切にしていくことが悪化させないための最初の一歩です。

以下は、経営学部古谷嘉一郎准教授らの「子育てバーンアウト尺度」をまとめたチェックリストです。

ぜひ、今の自分の状態をチェックするのに参考にしてみてください。

 

親のバーンアウトチェック表(尺度表)

■親のバーンアウト度合いを、以下の4つの項目でチェックします。

●親の役割についての情緒的消耗感
●過去の自分との対比
●親の役割に対するうんざり感
●子どもとの感情的距離

■各文について、そうした感情を体験したことがあれば、どの程度の頻度でそう 感じるか、以下のどれかの点数を記入してみましょう。

得点(頻度)

 0点 :全くない
1点:年に数回以下
2点:月に 1 回
3点:月に数回

4点:週に 1 回
5点:週に数回
6点:毎日

 

親の役割についての情緒的消耗感
チェック項目 点数
親としての自分の役割にすっかり疲れ果てている
親として本当に疲れ果ててしまっている感覚がある
親としての自分の役割に疲れてしまっているので、寝ても疲れが取れないように思える
朝起きて、また 1 日子供の相手をしないといけない時、始める前から疲れ果ててしまうように感じる
自分の子供のために、あれもこれもしないといけないと考えるだけで、くたくたになってしまう
自分の子供の世話をするエネルギーが全くない
親としての役割は、私の能力を使い果たしてしまう
自分の子供の世話を、まるで自動操縦装置のようにやってしまっていると感じることがある
親としての自分の役割となると、最低限のことさえやっていれば良いという状態になっている

 

過去の自分との対比
チェック項目 点数
以前のような良い父親または母親ではなくなってしまっていると思う
自分は以前のような親ではなくなってしまったと内心思う
自分はひどい親になってしまったと、恥ずかしく思う
親としての自分に、もう誇りを持てない
自分の子供の相手をしている時、もう自分が自分でないように感じる
父親または母親としての、自分の方向性を見失っているように感じる

 

親の役割に対するうんざり感
チェック項目 点数
父親または母親としての自分の役割には、もう耐えられない
もうこれ以上、親であることに耐えられない
もう、親などやっていられないと感じる
親という仕事をこなせないと感じる

 

子どもとの感情的距離
チェック項目 点数
親として子供にしなければいけないことはしているが、それ以上のことはしない  
毎日の決まった仕事(車で送る、寝かしつけ、食事)以外に、もはや子供のために努力することがで きない  
自分の子供に対して、もはや愛情を示すことができない  

あなたの親のバーンアウトの合計点数はいかがでしたか?

ちなみに、1500 名の子育て中の親(20~59 歳)を対象に行われた調査では、最高が 132 点、最低が 0 点、平均は 21.7 点という結果でした。

この得点は毎日やるたびに変わっていくはずです。
ぜひ、今のあなたの状態を知るために上手く活用してみてください。


バーンアウトとうつ病の違い

ここまで読んでいただいた方の中には、バーンアウトとうつ病は似ていると感じた方もいるかもしれません。
たしかに、情緒的消耗感だけみるととてもよく似ている両者ですが

うつ病が「自分なんてダメだ」と自罰的になるのに対して、バーンアウトは怒りの感情を他者に向ける他罰的な傾向に陥るといわれています。

しかし、うつ病でも他罰的なものもありますし、バーンアウトからうつ病へ移行することもありますから、うつ病かな…と思ったら、自己判断はせずに専門医に見てもらうのがいいでしょう。

 

バーンアウト症候群の回復段階(対処法)

ここでは、 Bernier (1998)の研究を基にした、親のバーンアウトの回復過程をご紹介しています。
「わたしバーンアウトかも…」「身近な人がバーンアウトかも…」という方は参考にしてみてください。

第一段階
「自分の状態を自覚する」

バーンアウト症候群からの回復は、バーンアウトが単なる疲労ではないことを自覚することから始まります。

この段階では、「~しなければならない」という思い込みが本人の「自覚」を難しくしている場合もあるため、家族や友人からの助言がとても大切になります。

第二段階
「心の平穏を優先する」

この段階で大切なのは「子どものことを考えないようにする」ことです。

可能ならば、子どもの世話は家族などにお願いし「物理的な距離」をおけるといいでしょう。
一緒にいるとどうしても「~しなければ」という思い込みから、やらないことへの 「罪の意識」で症状を悪化させかねません。
必要があれば、医師やカウンセラーなど専門家に相談することもいいでしょう。

第三段階
「あせらず待つ」

この段階ではよく寝て心身ともにリラックスすることを心がけます。

回復には時間がかかるものです。
あせることなく徐々に気持ちの落ち着きを取り戻していきましょう。

心身がリラックスしてきたら、趣味や新しい活動などに気負うことなく時間を費やせるようにもなってきます。

第四段階
「今までの子育て、自分を振り返る」

これまでの尽くしすぎたやり方を振り返り、自分のやり方を見直す時期です。
これは 「もっと気楽に」「手を抜く」という単純なものではなく、「自分は子育ての中で何を大切にしているんだろう」「 何をどう考えていこう」と自らに問い直す作業です。
時として、自己否定を伴うつらく不安な時期もあるかもしれませんが、バーンアウトから立ち直り、元の生活に戻るためには最も重要な時期でもあります。

第五段階
「これからの子育てを模索する」

ここまでは親の内面の克服がテーマでしたが、ここからは、「子どもの事」「家族の事」など 外的要因を含めて 新しい価値観、やり方を模索する時期です。

第六段階
「新しい子育てを実行する」

それまでの自分の子育ての姿勢を断ち切り、新しい姿勢、やり方へと変化させていきます
これにより、親自身が自らの成長を感じることも多くなるでしょう。

 

ポイント

人生の中で、何もしない時間は決して無駄ではありません。

むしろ、バーンアウトが親自身を成長させ、新しい親子関係への出発点となるよう、焦らずバーンアウトの回復に努めていきましょう

 

バーンアウトにならないために出来ること

とはいえ、バーンアウト症候群に陥らないのが一番!
それには、日ごろからの予防の意識が大切です。

 

運動や睡眠など生活習慣を整える

朝きちんと起きて、適度な運動を心がけることで自律神経を整え、負の感情のループに陥いるのを予防できます。

特に、「睡眠には難しい問題を解決してくれる可能性がある」という研究結果もあるくらい睡眠は大切です。

人に頼る

バーンアウトになりやすい人は人に頼るのが苦手な傾向があります。
ストレスが溜まって爆発してしまう前に、日ごろから頼れる人みつけておくといいでしょう。

子どもは子ども、私は私(自他分離)

バーンアウトに陥ってしまう人は、親という役割に24時間しばられ子どもと一体化してしまう人が多いです。

子どものために尽くすのは良いのですが、親が子供の問題を解決しようと先回りしすぎると、結果的に自分で問題を解決する能力、責任を奪ってしまい自分で考えない子どもになる可能性を高めます

子どもは親の所有物ではありません。

親の思い通りに動かすのではなく、また、親も我慢しすぎることなく、親子の良い関係を作ることが何より大切です。

 

親子の良い関係を作るために出来ること

●子どものことをよく知る

子どもの好きなものや興味のあるものは何ですか?
先ずは今の子どもを知ろうとすることが大切です。

また、心理学や脳科学の視点からみた子どもの発達段階を学ぶことも、子どもへの理解を深めたり、親の価値観の幅を広げてくれるでしょう。

●親が自分の人生を生きる

自分のしたいことをしている親は子どもに対しての要求が少ないといわれています。
また、子どもは「親の言うことではなくしていることを見ている」ものです。
ぜひ、自分の人生を楽しむ親の背中を見せてあげたいものです。

●コミュニケーションを学ぶ

子どもへの接し方を変えていくこともバーンアウトを防ぐのには特に有効です。
いくら子どもを愛していても、それが愛として子どもに伝わらなければ子どもはあなたの言うことを聞かないでしょう。
でもそれは、あなたが悪いのではなく、ただやり方が違っていることがほとんどです。

コミュニケーションを学ぶなら

具体的な接し方が学ぶべる親業講座がおすすめです!

親業訓練講座は、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士が創始した親のためのコミュニケーションプログラムです。

※お持ちのお子さんの年齢を問いません。
※オンラインor対面

 

親業訓練講座は、専門家が使うような具体的な方法を、専門の勉強をしたことがない親でもすぐに実践できるように、段階的に分かりやすく、自分の事例で学べるようプログラムされています。

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まとめ

以上、親のバーンアウト症候群についてお伝えしました。
バーンアウトは、乳幼児をお持ちのお子さんはもちろん、子どものスポーツを熱心に応援する親、受験、不登校や母子登校などを乗り越えようとする過程、乗り越えた後などでも起こります。

おかしいな…と思ったら、早めの休養をとるようにしてくださいね。


 

  • この記事を書いた人

生駒 章子

親の学校プロジェクトの代表。元ガミガミママで今は親教育の専門家。
自身の原体験から、子育て支援ではなく「親支援」にこだわって活動中。趣味は読書(マンガ)

ファミリーワークス合同会社の代表。
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